トヨタ自動車が在宅勤務制度を拡充させるというニュースが流れました。
具体的には対象社員の拡充、一定の出社義務の撤廃があるようです。
私はこのニュースを見たときに、日本のサラリーマンの働き方がついに変わるかもしれないと思いました。
なぜならトヨタは日本を代表する企業であり、非常に大きな影響力があるからです。
トヨタを手本として追従する企業が増える可能性は大いにあると思います。
今回はこの記事を深掘りしながら、日本の企業の働き方について見ていきます。
トヨタの在宅勤務制度の拡充で日本の働き方は変わる?

緊急事態宣言によって、多くの企業で急遽テレワークが取り入れられました。
このテレワークにはさまざまな意見がリアル・ネットの双方で飛び交いました。
- 満員電車での通勤時間がなくなった
- 家族の時間が増えた
- 問題なく仕事が回っている
- ストレスがたまった
- 仕事の効率が落ちた
- 気軽に質問ができなくなった
このように賛否両論がありました。また、経営者・管理職・一般社員といったそれぞれの立場によって意見が異なるところもありました。
そんな中、緊急事態宣言の解除とともに、テレワークやリモートワークからオフィスに社員を戻す企業、そのまま継続する企業に分かれました。
どちらかというとオフィスに戻った人の方が多いと思います。
そして、このテレワークの終了にもいろいろな意見があります。
「やはり対面の方がコミュニケーションの質が高く効率的だ」「創造的な仕事はリアルでないとできない」という意見。
一方「満員電車にはまだ感染のリスクがある」「社員を大切にしていない」「在宅勤務の方が良い」といった意見もあります。
このように意見は真っ二つに分かれています。
しかし、あのトヨタが動きました。
トヨタの前にも、ジョブ型雇用導入とあわせて日立製作所、富士通、資生堂などで在宅勤務を中心に据える制度を発表していました。
また、カルビーも原則テレワークとし、更に所属部門が認めた場合は単身赴任も解除できる制度にするようです。
それらに続いて、このトヨタの決定はインパクトがあります。
トヨタ自動車は売上、利益、知名度、ブランド力、雇用者数といった指標で日本を代表する企業です。
このトヨタの決定は、産業界への影響が最も大きいと考えられます。
これに追従する流れができるかもしれません。また、なかなか自社だけでは決めきれず、周囲の反応を伺っていた企業が判断しやすくなるかもしれません。
企業側の在宅勤務のメリット・デメリット

在宅勤務が普及するかを予測するために、ここからは私が考える在宅勤務のメリット・デメリットを説明していきます。
まずは企業側から見ていきます。
企業の在宅勤務のメリット
企業の在宅勤務のメリットは以下の通りです。
- コスト削減ができる
- 優秀な人材を確保できる
- 企業ブランドの向上
企業のメリット①:コスト削減ができる
分かりやすいものでは、オフィスの賃料・光熱費、コピー代、従業員の定期代、単身赴任手当、出張費用が削減できます。
従業員が多い大企業であればあるほど、この効果が大きいです。
このなかには長期間で契約しており、すぐには変えられないものもあるかもしれませんが、中長期でみるとコスト削減効果が出てくるはずです。
企業のメリット②:優秀な人材を確保できる
もう一つは優秀な人材の確保です。
働く場所を自由に選べる会社と、オフィスへの通勤を義務付ける企業の2つの選択肢があった場合、自分の裁量で働く場所を決められる会社が魅力的にうつるのではないでしょうか。
引く手あまたの優秀な人材がどちらを選ぶかは考えるまでもなさそうです。
もちろん、在宅勤務だけが企業選びのポイントではありませんが、ライフワークバランスを重視する傾向にある若手社員には大きな要素です。
企業のメリット③:企業ブランドの向上
世の中の流れでは、在宅勤務を認める企業の評価が高くなる傾向にあるようです。
社員を大切にしている、多様な働き方を推進していると評価されます。
特に今はSNSの時代です。マスコミのニュースだけでなく、SNSで評判が一気に拡散するので企業ブランドに与える影響は大きいと考えられます。
企業の在宅勤務のデメリット
次に、企業の在宅勤務のデメリットは以下の通りです。
- 仕事の効率が落ちる
- 教育が難しい
- 一体感を醸成するのが難しい
企業のデメリット①:仕事の効率が落ちる
日本の企業では同僚と協力しながら仕事を進めていくスタイルが多いです。そんな仕事の進め方ではチームプレーが重要になってきます。
チームでコミュニケーションをとるのに、やはりテレワークではどうしても効率が落ちてしまうところも出てきます。
パッと気軽に聞けない、表情が見えないということで、コミュニケーションの量・質が落ち、結果として仕事の効率も悪くなる可能性があります。
企業のデメリット②:教育が難しい
自分で仕事をバリバリとこなすベテラン社員は問題ありませんが、若手社員への教育には課題があります。
新卒で一括採用し、戦力になるまで社内で育てる日本企業では、日々の上司・先輩からのOJTによる指導が教育の中心です。しかし在宅勤務では、その日々のOJTでの教育の量・質は落ちてしまいます。
企業のデメリット③:一体感を醸成するのが難しい
良くも悪くも日本企業には外資系企業にはない独特の一体感があります。それは日々の濃密な付き合いから生まれています。
例えば、朝礼、ランチ、飲み会、ゴルフなどです。
しかし在宅勤務だと、一緒にいる時間が減り、そういった一体感が薄れてきます。会社への求心力をどうやって維持するかは企業にとって大きな課題です。
従業員側の在宅勤務のメリット・デメリット

次に従業員側のメリット・デメリットを考えていきます。
従業員の在宅勤務のメリット
従業員の在宅勤務のメリットは以下の通りです。
- 自分の時間が増える
- 多様な働き方ができる
従業員のメリット①:自分の時間が増える
従業員からすれば満員電車での通勤が無くなり自分の時間が増えます。
もし、片道1時間。往復2時間を通勤時間に使っている人であれば、ざっくりと2時間×20日×12か月で、1年あたり480時間の削減になります。
驚くことに、この480時間は日数で言うと20日間であり、これだけ自由な日が増えたと言えるのです。しかもこの20日は、寝ている時間を含まない、起きている時間での20日です。
在宅勤務では実質、休日が増えることになります。しかも大幅に増えます。
従業員のメリット②:多様な働き方ができる
また、在宅勤務では多様な働き方もできます。例えば、働きたくても、育児、介護のために働けなかった人も、家からなら働ける可能性がでてきます。
従業員の在宅勤務のデメリット
従業員の在宅勤務のデメリットは以下の通りです。
- 仕事に集中できない
- 仕事場の環境が整っておらず仕事がしにくい
- 気軽に質問ができずコミュニケーションが取りにくい
従業員のデメリット①:仕事に集中できない
自分専用の書斎がなく家族との共用スペースでの仕事だと、なかなか集中力を保つのが難しいですよね。
子育てをしている家庭はなかなか集中するのが厳しいのが現実です。仕事中でも子供はお構いなしに構ってほしくて寄ってきます。
自分を律することができない人は、上司や同僚の目がないので、サボってしまうこともあるかと思います。
従業員のデメリット②:仕事場の環境が整っておらず仕事がしにくい
インターネット環境、ディスプレイ、デスク・椅子といった働く環境が家庭だと整っておらず仕事がしにくいという声もあります。
従業員のデメリット③:気軽に質問ができずコミュニケーションが取りにくい
仕事をしているとちょっとした疑問が出てきます。
そんなときにオフィスなら、その人のデスクまで歩いて行って質問をしたり、内線をかけて気軽に質問をすることができます。
また、上司や少し苦手な人には、やはりFace to Faceで顔色を見ながら話したいときもあります。
そういったことがテレワークではできないため、どうしてもコミュニケーションが取れずに仕事の効率が落ちてしまうデメリットはあります。
日本企業の在宅勤務の選択は?

この記事ではトヨタをはじめとした在宅勤務に舵を切る大企業の動きと、企業と従業員双方のメリット・デメリットを掘り下げました。
在宅勤務には企業・従業員の双方にメリットはありながらも、まだまだ課題もあることが分かってもらえたかと思います。
企業としては世の中の流れや意見を踏まえつつ、自社の収益への影響を見ながら在宅勤務を制度化するかの選択を今後していくと考えられます。
しかし、この記事で言及した大企業の動きは、在宅勤務への後押しになるでしょう。
私は一気にすべての企業が変わることはないにせよ、在宅勤務に移行しやすい業界・職種から徐々に変わっていくのではないかと考えています。
そうなると私たちの働き方や日々の生活も大きく変わりますし、キャリアプランにも大きな影響が出てきます。
在宅勤務ではどうしても仕事のプロセスが見えにくいところから、アウトプット(結果)重視の評価体系になることが考えられます。
その結果、今後出世するには、従来重視された上司とのリレーションシップよりも、仕事が本当にできるかといった実力重視になってくると思われます。
個人としてはそういった未来も予測しながら、今は目の前のできることをして、日々の仕事を通じた成長や、自己投資といった積み上げを行っていくことが大事です。
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